5月28日(木)、産経新聞編集委員田村秀男氏は、第52回参議院議員木俣佳丈朝食勉強会で「米国発金融危機の行方」のテーマで講演され、その中で日本が最大の危機に陥っていると強調されました。
「アメリカ発サブプライムローン危機で、一番損したのはどこかと言うと、実はヨーロッパの金融機関が軒並みやられました。その次にもっとも株式市場で株が暴落したのは、東京も暴落したのですけど、もうはるかに高いスケールで株が急落したのはロシアである」と話されました。
「金融危機が起きる前のプーチン首相は、もうイケイケドンドン。原油もガスの価格もどんどん上がる。今度はロシアの通貨ルーブルが、ドル、ユーロに挑戦できるのだ。だからもう我々の石油、ロシアの石油はもうルーブルじゃないと売らない」と言っていたが、今では、その勢いはないとロシアの窮状を語られました。
田村氏は、米国発の金融危機の後、アメリカや中国などが取っている様々な経済対策を説明した上で、ヨーロッパやロシアの危機よりも日本の危機がもっと大変であると指摘されました。「日本こそが100年に一度の危機に陥っているのではないか」と心配され、早急な構造的政策転換が必要であると指摘されました。
アメリカは公共投資による景気対策の効果が見込まれるから大丈夫だとの見方です。「クリントン政権の後半に大いに公共投資を増やしたら、景気が良くなった。そして4年間ぐらい税収がどんどん増え、財政収支が黒字になったと話し、「アメリカは財政支出を増やせば何とかなるかもしれない」と楽観視されていました。但し、現在のアメリカで同様な効果がある構造になっているか否かやって見なければ分からないと付加されました。
中国に関しては「人口が13億人で、農村には失業した出稼ぎの人達が2400万人います。新卒者の4割は就職先がありませんが、資本主義の発展からすれば初期の段階で成長の余地がある」と分析されました。
インドについては「経済成長とは何かと言うと、所詮、人間が働いて作ることですから、人間が、若い人が多ければ、経済成長は生まれます。だから可能性がある」と説明されました。ヨーロッパについては、ドイツやフランスの対策が効果を出しており、さほど心配する必要がないとの見解を示されました。最も悲観的にならざるを得ないのが、日本の将来のようです。
「日本では公共投資やっても景気が良くなりません」。過去20年間の巨額な公共投資が経済成長にインパクトを与えていないとデーターを用いて説明されました。
これまでの経済理論が全く破産している
2008年9月15日のリーマンショック後に、米国での車等の耐久消費材の需要が激減した大きな理由は、住宅価格の高騰が長年にわたり続き、ホームエクイティローン(住宅の含み益を担保にして融資枠を設定し、その枠内なら借入返済自由の米国で発展しているローンで、リフォーム費用や教育費それに耐久消費財購入資金を借り入れる際に利用される)等の利用により、収入以上に消費するという米国の過剰消費が極限にたどり着いたからだと言えます。それまでは、米国は「世界の最大の買い手」と大きな役割を果たしてきました。米国は経常収支を赤字にしてまでも世界各国から商品を買ってきたのです。
田村氏は、こうした過剰消費の米国への輸出の増大は米金融のバブルの副産物であり、従来の景気指標では説明できないと話され、それに代わる二つの指標を導入されました。一つは「米銀デリバテイフ想定元本」の伸びの指数で、もう一つは「米住宅ローン」の伸びの指数です。
田村氏が作成された「米住宅ローン・デリバテイフ・GDP・中国の輸出」の関連図を見ると明らかなように、1995年から2007年までの「米銀デリバテイフ想定元本」の伸びと「米住宅ローン」の伸び、それに中国の経済発展のバロメーターである「中国の輸出」の伸び、この三つの伸びを指数化してグラフにすると見事に一致するのです。しかし、この三つの指数のグラフと「米GDP」の伸びの指数のグラフとは連動していないのです。言い換えると、中国の輸出の伸びは、アメリカの実際の景気がどうとか言うのではなく、アメリカのデリバテイフ想定元本が膨張していく速度に合わせて増えているわけです。このデリバテイフ想定元本は世界のGDPの10数倍の規模にまで膨れ上がっていました。田村氏は「これまでの経済理論が全く破産している」と強調されました。(ケインズ理論に基づいて)財政支出をすれば有効需要が創出されるとか、金利を下げることで流通通貨の量が増大して(輸入を含む)経済の活性化に良い影響を与えられるとは、断定出来なくなっているのが現実である、と強調されました。
日銀のゼロ金利・量的緩和政策とアメリカの住宅価格の高騰
田村氏によると、日銀の金利政策・量的政策がアメリカの住宅価格の高騰に大いに関係しています。表2の「グローバル化された日米の金融」で表示されているように、2006年まで「日銀が供給する円資金の量の増大と並行して、アメリカの主要都市平均住宅価格指数が上がって行った」のです。日銀は、2001年にゼロ金利・量的緩和政策を開始しました。そして、量的緩和政策は2006年3月まで、ゼロ金利政策は2006年7月まで続けました。その間、日銀は、実質的に金利ゼロで円資金をどんどん、幾らでも供給したのです。ところが日本は内需不振で、このほぼ金利ゼロの円の需要がありませんでした。
しかし、アメリカのヘッジファンドとか投資フアンドはこの安い資金を調達して、アメリカの住宅とか、他の金融商品に投資しました。その際にレバレッジ効果を働かせて利益を何十倍にも拡大したのです。このようにして日本の円を使ってアメリカの住宅ローンが潤沢に用意され、本来ならば購入をあきらめていた人々にも提供されるようになりました。結果として、住宅価格は上昇を続けました。アメリカの住宅ローンを拡大させるに日本の円が大いに貢献したのです。逆に言えば、金利の低い円の大量入手が困難になると、大きな問題が生じます。実際に、2006年3月、日銀が量的緩和政策を解除すると、数カ月もしないうちに、アメリカの住宅価格が下がり始めました。「ドルと円はつながっているわけです。ドルを中心にはしておりますが、円もその中に組み込まれています」と田村氏が説明されました。
住宅価格の高騰と過剰消費
アメリカが住宅バブルに沸いていた時、耐久消費財は大いに売れました。米国民は、年率10%を上回る住宅価格の上昇と低金利でホームエクイティローンや住宅ローンの借り増しで、所得を上回る消費をするための借金をすることが出来たのです。2006年までの約10年間、米国のGDPは年間3.2〜6.6%で伸びましたが、米国の耐久消費財支出はそれよりも大きい年間7.4%で伸びました。日本の米国への輸出(車や家電製品等)が大きく伸びたのも、ホームエクイティローン等を使っての耐久消費財の購入が大きな要因だったのです。しかも、円安により日本製品のドル建て価格は廉価になっていました。当時、日銀のゼロ金利・量的緩和政策の下で円はすさまじい過剰流動性状態にあり、アメリカのヘッジフアンド等は低金利で円を調達し、その円をたたき売ってドルに替え、高収益をもたらす金融商品を購入していたので円安になり、その状態が長く続いていたのです。
住宅価格の下落と貯蓄率の増加と消費の激減
米国の住宅価格は2006年6月から下落を始めたので、それ以後は住宅価格の値上がりによる含み益を使ったホームエクイティローンによる耐久消費財等の購入・消費が弱まり始めました。その後、2007年8月のサブプライムローン危機そして2008年9月15日のリーマンショック後、米国の住宅価格の下落は著しく、もはや消費先行の過剰消費行動が出来なくなりました。アメリカの貯蓄率は2006年にはマイナス1.0%までさがりました。しかしそこを底に上昇し、現在(2009年第一四半期)は4.2%と日本の貯蓄率よりも高くなっています。倹約に目覚めた米国民はもうかってのような過剰消費経済には戻らないと見られています。耐久消費財の代表である自動車の販売台数を見ても大激減です。2007年には1620万台が売れたのですが、2008年には300万台も減少し、1320万台になりました。2009年は950万台へと一層の落ち込みが予測されています。
米国の過剰消費がなくなり、日本の米国向け輸出も大幅に減少しております。内閣府が発表した2008年度の輸出数量を見ると、前年同期比でマイナス14.0%となっています。2009年1-3月は、前年同期比でなんとマイナス42.5%と大幅な下落です。外需依存で景気回復をしてきた日本にとって米国・中国向け輸出の激減は大きな痛手になっています。2009年1月〜3月期のGDP(国内総生産)速報によると、物価変動の影響を除いた実質GDPの成長率は、前期比でマイナス4.0%、年率換算でマイナス15.2%と戦後最大の減少率を記録しています。
政権交代というのは政策転換である
田村氏は、今回の金融危機の日本にとっての最大の試練は、対米輸出依存で来た戦後の日本の経済あるいはビジネスモデルから脱却し、内需拡大による経済発展ができるように速やかに政策転換をすることであると強調されました。
この政策の大転換について、田村氏は、「恐らく国民の大多数が自公では駄目だ。政権交代すべきじゃないかと考えている」と分析されています。田村氏は「政権交代というのは政策転換である」と強調された後、戦後日本をコントロールしてきた官僚主導型政治により日本のGDPの7割相当を国家予算(一般会計と特別会計の純合計)が占めている現在の社会主義的国家経済運営システムから脱皮して、更にアメリカに依存している経済・金融・安全保障の構造をどういう風に変えていくかを早急に決断し、実行していくべきだと示唆されました。「政策転換が出来れば、日本の将来は本当に明るくなってくる。今、希望が持てる国づくりに取り掛かる最後のチャンスが来ている」と、鳩山民主党に大きな期待を示されました。
田村氏が講演の中で何度も言われたように、「困難な時は、好機になる。チャンスになる」と思います。「日本人が前向きに考え始めているのが良い」との指摘も嬉しい限りです。政権交代で、日本を輸出主導経済から内需主導経済へ転換させ、活き活きとした国にするために最善の努力をして参ります。
2009年07月28日
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