2009年07月28日

次世代スーパーコンピュータ

7月8日に開催された第53回参議院議員木俣佳丈朝食勉強会で、独立行政法人 理化学研究所情報基盤センター長 姫野龍太郎氏は、日本で稼働しているスーパーコンピュータ台数の世界に占める比率が大幅に低下しており、こうした傾向が更に続くと日本の科学技術や産業の革新のレベルが欧米のみならずアジアの他の国々にも遅れを取ることになる恐れがある、と発言されました。
「スーパーコンピュータの活用と産業競争力」のテーマで講演された姫野龍太郎氏は、今日ではスーパーコンピュータの活用が科学技術・産業の革新の源となっており、スーパーコンピュータ、特にトップランキングのスーパーコンピュータの設置稼働台数(世界での比率)が日本で減少していることに大いに危惧されています。日本で稼働しているスーパーコンピュータの「(世界の)トップ500リスト」に占める比率は長期低落傾向を示しています。1993年の日本の占有率は22.2%でしたが、それからずっと下落を続け、2009年には3. 0 %にまで落ち込んでいます。この間に、米国の占有率は45%から58.2%へと13.2パーセントポイントも上昇しています。日本を除くアジアの占有率は1.4%から6.6%へと、約5倍に増加しました。他方、欧州は28.4%から28.2%とほぼ横ばいです。スーパーコンピュータは、気象予測、地質探査、構造解析、流体解析、核融合シミュレーション等の分野で使われています。
姫野氏によると、スーパーコンピュータの性能向上とともに、日本においてはその利用分野が以下のように拡大されてきています。ž     1980年代前半:構造解析ž     1980年代後半:流体解析・気象気候解析ž     1990年代前半:材料ž     1990年代後半:ゲノム理論ž     2000年代:地球環境ž     現在:MD計算(ナノ・ライフ)スーパーコンピュータを使った身近なシミュレーションの例として、天気予報、自動車衝突時の安全性のテスト、エアバッグの開発、ペットボトルの成型、携帯電話の強度設計、電子レンジの電磁場解析があげられます。
姫野氏は、スーパーコンピュータを使ったシミュレーションの大きなメリットは、開発期間の大幅短縮と費用の大幅削減が可能になることだ、と強調されました。シミュレーションを使えなかった時代には、例えば、新車の開発の際には、衝突安全性(クラッシャブルゾーンを確保。室内にエンジンを侵入させない等)等の点検のために10−20台の試作車が製作され、実際の衝突実験が繰り返し行われたそうです。一台の試作車の製造には、熟練工が手作りで行うため数カ月かかり、費用も数千万円かかります。しかし、今日では、もう高価な試作車を使った実体実験をしなくても、衝突安全性の向上を図るための実験が出来るのです。このようなシミュレーションの利用で、車の強度と耐久性の向上、軽量化、エンジンの燃費向上、排気性能向上、制御技術向上等もシミュレーションにより素晴らしい進化を遂げています。日本の新車開発期間は1980−84年には40ヵ月でしたが2005−09年には10-12ヵ月へと短縮されています。
姫野氏の説明によると、スーパーコンピュータとは、同時代のコンピューターから抜きんでた性能を持つコンピューターで、今で言えばパソコンの1000倍以上の能力を持つものをさすようです。高速度で計算できるスーパーコンピュータを使って、以前には不可能だったシミュレーション(現実に想定される条件を取り入れて、実際に近い状況をつくり出すこと)が短時間でできるようになっています。
コンピューターの性能の進歩には目を見張るものがあります。過去60年間に計算速度は2000億倍も高速化されております。1990年代からは平均3.8年に10倍で高速化されており、更に少なくとも後15年ぐらいは、5年毎に10倍ずつ速くなると予測されています。姫野氏によると、今日の日本の産業界におけるスーパーコンピューテイング(スーパーコンピュータの利用方法)には、ソフトの利用上に大きな問題があります。一つは、使用している商用ソフトのライセンス費用が極めて高いことです。ハードの費用の数倍にもなっています。従って、日本の産業力を高めるには、スーパーコンピューテイングの費用を削減する一環としてソフトの開発を廉価に行う必要があります。もう一つは、シミュレーション計算のためのモデル作成が長期化しており、計算モデルの作成が計算時間の10倍から100倍になることです。計算のコストよりも、モデル作成の人件費が高い状況になっています。
日本でのスーパーコンピュータの開発・製造にも大きな問題がでています。それは次の理由からです。1)   CPUの開発が高度化し、非日系会社の数社に集約されつつある。2)   PCの性能が向上し、スーパーコンピュータの市場を食っている。3)   PCクラスターの台頭で、スーパーコンピュータの市場が伸びない。4)   上記1)2)3)の状況の中で、日本の三大コンピューターメーカーの内の二社が次世代スーパーコンピュータの製造から撤退を表明した。これまで順調だった日本のスーパーコンピュータの利用をしたものづくり、医・薬の開発に大きな陰りが出てきていると、姫野氏は見ています。このような状況が続くようだと日本の産業国際競争力の衰退化に拍車がかかる恐れがある、「家電・携帯電話などのLSI設計・製造までもが外国で行われるようになる」と心配されています。日本が科学技術・学術研究、産業、医・薬など広汎な分野で世界をリードし続けるために、国を挙げた支援体制を構築する必要があると痛切に感じました。政府は、10ペタFLOPS級(1ペタFLOPSとは1秒間に1千兆回の計算)のスーパーコンピュータを開発させるとともに、そのコンピューターを最大限活用するためのソフトの開発・普及が必要であると考え、「次世代スーパーコンピュータ」プロジェクトを支援しています。順調に行けば、平成24年に10ペタフロップス超級スーパーコンピュータが完成・稼働予定で、ナノサイエンスとライフサイエンスでのシミュレーションに使用される予定です。
しかし、政府の支援は十分なものとは言えないものです。平成18-24年度の7年間で総額1154億円の支援に過ぎません。スーパーコンピュータは、科学技術の重要な基盤技術であるが、そのマーケットは限られており、民間会社が自力で開発費をまかなえる状況にはなっていません。
日本の産業育成の立場から世界最先端・最高性能の次世代スーパーコンピュータの開発・整備及び利用技術の開発・普及のために、一層進んだ、国を挙げた支援体制を構築する必要があると痛切に感じました。
選択と集中で政府の限られた予算を最大限なインパクトをだす事業に振り向けさせるように事業の徹底的な見直しが必要です。皆さんからのアドバイスをお聴かせください。
posted by 木俣佳丈 at 18:19| 東京 晴れ| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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